椎間板ヘルニア手術の考え方
■患者の理想と現実とのギャップ
椎間板ヘルニア患者の約90%は、手術を行わなくても保存療法で対処できるといわれています。しかし問題となるのは手術が必要となる残り10%の患者です。椎間板ヘルニアの手術は、必ずしも安全というわけではなく、運が悪ければ重篤な合併症を発症したり、後遺症を残す危険性もないわけではありません。そのため、手術が必要となった椎間板ヘルニア患者は、最高の技術をもった医師に、最先端の手術をしてもらいたいと考えるのが普通です。
しかし、その目的を達成することは容易ではありません。近年、椎間板ヘルニアの手術は、患者への肉体的侵襲が少なく入院期間も短くてすむ最小侵襲手術(内視鏡下手術、顕微鏡下手術など)が主流になりつつあります。そのため、最小侵襲手術が可能な患者であれば、この手術を受けた方がメリットが大きいことは明らかです。しかし日本では、最小侵襲手術の技術が高いと考えられる病院や医師の数はそれほど多いわけではありません。
海外の例をあげれば、今世界的に椎間板ヘルニア手術(最小侵襲手術)の技術が高いとされているのは韓国です。その中でも最も有名な病院がウリドゥル病院で、年間約25,000万人の脊椎疾患患者の手術を行っています。このように技術が高く多数の患者を受け入れている病院があれば、手術が必要となったときには迷わずその病院に行けば良く、黙っていても最先端の手術を受けることができます。
ところが日本では、すべての病院が同様の方法で手術を行っているわけではなく、病院や診療科によって手術方法は異なります。最先端の最小侵襲手術を行っている病院もあれば、未だに昔ながらの切開手術しかしていない病院もあります。また医師による技術の差も大きいと考えられます。読売新聞が、日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄外科学会の指導医の所属施設を対象に行ったアンケート調査(調査期間2007年1〜12月、回答410施設)によれば、椎間板ヘルニア手術の入院日数は最短2日、最長74日、平均14.7日であり、施設間で大きなばらつきが見られています。[出典:読売ウイークリー臨時増刊2008.10.20 病院の実力。2008秋(読売新聞医療情報部編)」
したがって、手術に対する予備知識がないままに、黙って医師の言うことに従っていたのでは、最善の手術を受けられなくなるだけでなく、手術の失敗による合併症や後遺症のリスクも高まる危険性があります。
■診療病院と手術病院は別
患者は最初から手術することを想定して病院に行くわけではありません。最初は腰痛や手足のしびれなどの症状があって近くの病院やクリニックに行き、そこでX線やMRI
、CTを撮影し椎間板ヘルニアと診断されます。通常は保存療法で様子をみますが、治療を続けても改善がみられない場合や、症状がひどく日常生活への支障が大きいような場合には手術を考えることになります。こうして手術が必要となったときに、手術を行っている病院であればその病院で手術を受け、手術を行っていなければ紹介された病院で手術を受けるというのが一般的だと思います。
しかしここで問題となるのが、その病院が手術を受けるのに最適な病院であるのかどうかという点です。患者が最初から手術を想定して病院を選んではいない場合には、当然最適かどうかはわかりません。また、手術する病院を紹介してもらう場合には、多くは診察した医師の出身大学の医局を紹介されることになりますが、大学病院だからといって技術的に安心だという保証はありません。医局や医師によって得意分野や手術方法は異なりますし、手術経験の少ない医師にあたる可能性もあります。
したがって、手術が必要となった場合には、診療を受けている病院との関係を一旦切り離し、たとえ手間はかかっても新たに最善の手術を行ってくれる病院を探した方が、結果的に患者にとって有益となるケースが多くなると思います。ところが患者の多くは、手術に関する十分な知識をもたないため、その病院や手術方法が自分にとって最善のものかどうかを判断することができず、結果的に医師の言わるままに従ってしまうケースが多くなります。
患者にとって手術の結果というのは、今後の人生を左右する可能性もあることを認識すべきだと思います。ですから、手術を行う場合には、知識がないからといってすべて病院や医師まかせにするのではなく、患者自らが最先端手術を含めた手術方法全般を理解し、最善の手術をしてくれる病院を探す努力をすることが必要だと思います。