最小侵襲手術

■手術の基本は最小侵襲手術

患者の立場からすれば、手術というのはできるだけ侵襲が少ない方がよいことは明らかです。したがって、今後椎間板ヘルニアの手術は最小侵襲手術(内視鏡下手術、顕微鏡下手術)が中心になっていくことは間違いないと思います。すでに海外のヘルニア治療が進んでいる国では、手術の大部分が最小侵襲手術になっており、日本もそれに近づいていくと思います。

なぜ最小侵襲手術が良いかといえば、いずれの手術であっても、その目的とするところは「ヘルニアの除去」や「脊髄、神経根の除圧」など、同じであるからです。手術方法の違いが影響するのは、目的とする手術部位に到達するまでの正常組織に対する侵襲度であり、これは直接治療とは関係ない部分ですから、できるだけ少ない方が良いことになります。正常組織への侵襲を減らすことで患者の肉体的負担が少なくなれば、合併症や後遺症のリスクが軽減でき、入院期間も短縮できるため、患者にとってのメリットは明らかに大きいと考えられます。
したがって内視鏡下手術では対応できないような巨大ヘルニアや多椎間のヘルニアなどは別ですが、内視鏡下手術の適応となるような椎間板ヘルニアに対してまで、目視化での切開手術を行うことは適切ではないと思います。

ただ現実的には、医師から「内視鏡下手術の方が侵襲は少ないが、手術自体が難しいため、失敗する危険性もあり、確実性という点では目視下での手術の方が優れている。」という言われ方をされる場合もあると思います。確かに内視鏡下手術では、技術的な問題というものを無視することはできません。内視鏡下手術は直接手術部位を見ることができないため目視手術に比べると難易度が高く、より高い技術が要求されます。日本で内視鏡下手術が保険適応となったのは2006年4月と最近で、内視鏡下手術の歴史はまだ浅いため、高い技能を有する医師の数もそれ程多くはありません。

そのため内視鏡下手術を行っている病院であっても、開始してから日が浅く、十分な症例が蓄積されていないような場合や、手術経験が少ない医師が手術する場合などは、注意が必要だと思います。最小侵襲手術を受ける場合には、手術経験が豊富で、技術熟練した医師に手術をしてもらうことが原則であり、技術的に未熟な医師の手術を受けるくらいなら、むしろ目視手術の上手な医師に手術してもらう方が確実といえます。

ただし手術方法自体は、最小侵襲手術の方が患者にとってのメリットが大きいことは確かです。したがって、内視鏡下手術の技能が高い医師に手術してもらえば解決する問題であり、そうした医師を探せば良いということになります。

■新世代の内視鏡治療:PELD

日本では内視鏡手術といえばMED法が一般的ですが、最近ではさらに侵襲を少なくし、手術当日または翌日には退院可能なPELD(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘除術)も開始されています。PELDは、皮膚に6mmの穴を開け、そこから内視鏡を通して、微細メスによりヘルニアを切除するという方法です。局所麻酔で行うため、全身的合併症の発現リスクが高いとされる高齢者や基礎疾患を有する患者にも実施でき、肉体的な負担も少ないため、患者にとっては極めてメリットの大きい治療法です。

ただ日本ではまだ歴史が浅く、本格的に開始されたのは2007年頃で、実施できる医師も数名しかいません。それでも今までは全身麻酔による入院手術が必要であった患者が、日帰りで治療できるようになるわけですから、今後技術が確立され実施できる医師が増えてくれば、PELDが内視鏡治療の第一選択に変わっていくことは間違いないと思います。またPELDの対象となる患者は、腰椎椎間板ヘルニアですが、将来的には頸椎椎間板ヘルニアに対しても同様の治療(PECD)が行われるようになると思います。

なおPELD、PECDは海外の一部の国では標準的に行われている治療法で、韓国のウリドゥル病院では毎年数千人の患者がこの施術を受けています。ただし、治療法に関しては日本とは若干異なります。ウリドゥル病院では、レーザー、微細メス、自動吸引機、高周波など複数の機器の中から、患者のヘルニアの状態に合わせて最適なものを選択し、ヘルニアを除去するとともに、再発予防のため線維輪の再形成を行うという方法をとっています。ウリドゥル病院では数年前からPELD、PECDが行われており、実施症例が蓄積されていく中で、患者の病態に合わせて治療するという現在の治療法にたどり着いたのだと思います。