執刀医選びの基準
患者の立場から考えると、椎間板ヘルニアの手術は、侵襲が少なく合併症・後遺症の危険性も低い最小侵襲手術が望ましいと思います。そのため、執刀医も最小侵襲手術の技術が高い医師を中心に探していくのが得策だと思います。 参考までに、私が考えている執刀医の候補を選ぶ際の目安をお示しします。
(1) 日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
http://www.joa.or.jp/jp/frame.asp?id1=48
腰椎疾患の内視鏡手術を行う場合の候補となります。日本整形外科学会の認定資格で、ホームページで公表されている認定医の数は42名です(2008年1月現在。)。厳しい認定基準をクリアした医師ですから、その技術は非常に高いと考えて良いと思います。なお、内視鏡下手術は腰椎疾患が主な適応となり、頸椎疾患ではあまり行われていません。
(2) 日本脊髄外科学会 指導医
http://square.umin.ac.jp/jsss-hp/
頸椎疾患の顕微鏡手術を行う場合の候補となります。日本脊髄外科学会の認定資格で、ホームページで公表されている指導医の数は41名です(2008年6月現在。)。本学会は、脊椎手術を行っている脳神経外科医の学会で、認定医と指導医の資格があり、指導医の方がランクは上になります。脊椎手術に関しては日本でもトップクラスのドクターで、頸椎疾患、腰椎疾患の両方の手術を行っています。
(3) 最小侵襲手術に関する学会の運営委員、発表者
最小侵襲手術との関連性の高い学会に、日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS学会) http://www.jpstss.jp/ があります。本学会のプログラムの中に「低侵襲手術手技」というセッションがあるので、最近数年の発表者・施設を調べてみると良いと思います。頻繁に学会発表を行っている病院・医師というのは、最小侵襲脊椎手術の技術向上に積極的に取り組んでいると判断できます。
他の学会では、日本脊椎脊髄病学会 http://www.jssr.gr.jp/jssr_web/html/index.html などもあります。
(4) 専門雑誌の編集者・執筆者
一般患者であっても、たまには本屋(医学書がある大規模書店)に行って専門雑誌や書籍を読んでみると、非常に役立つ情報が得られるはずです。特に最小侵襲手術に関係する雑誌や書籍の編集者・執筆者というのは、技術的に上位の医師であり、執刀医の候補としても適していると思います。
何冊か雑誌の例をあげますが、これ以外にも参考になる本は数多くあります。なお注意する点として、最小侵襲手術の技術は年々進歩していますので、できるだけ出版年が新しい本を選ぶことが大切です。
①脊椎内視鏡下手術−基本手技から技術認定まで,監修 日本整形外科学会脊椎内視鏡下手術・技術認定委員会,南江堂,2007
この本は内視鏡下手術の実技指導書です。編集者・執筆者は指導的立場の方ですから、当然技術も優れています。
| ■編集者 | ||
| 四宮 謙一 出沢 明 |
(日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定委員会 担当理事) (日本整形外科学会 脊椎内視鏡下手術・技術認定委員会 委員長) |
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■執筆者 |
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四宮 謙一 出沢 明 吉田 宗人 蜂谷 裕道 豊根 知明 長谷川 徹 牟田 智也 夏山 元伸 高橋 寛 高野 裕一 佐藤 公治 松本 守雄 中村 博亮 中川 幸洋 八木 省次 紺野 愼一 平泉 裕 江原 宗平 |
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外科学分野教授) (帝京大学医学部附属溝口病院整形外科教授) (和歌山県立医科大学整形外科学教授) (はちや整形外科病院院長) (帝京大学ちば総合医療センター整形外科教授) (川崎医科大学整形外科学准教授) (順天堂大学医学部附属静岡病院整形外科) (関東労災病院整形外科部長) (東邦大学医学部整形外科学講師) (秋田赤十字病院整形外科部長) (名古屋第二赤十字病院整形外科部長) (慶應義塾大学医学部運動器機能再建・再生学准教授) (大阪市立総合医療センター整形外科部長) (和歌山県立医科大学整形外科学) (高松赤十字病院整形外科部長) (福島県立医科大学医学部整形外科学准教授) (昭和大学医学部病院整形外科学准教授) (茅ヶ崎徳州会総合病院脊椎・側弯症外科センターセンター長,副院長) |
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| 脊椎内視鏡下手術−基本手技から技術認定まで,監修 日本整形外科学会脊椎内視鏡下手術・技術認定委員会,南江堂,2007 |
②Monthly Book Orthopaedics. 19(12),2006 低侵襲脊椎手術のコツとpitfall(編集企画 中井定明), 全日本病院出版会
この本は整形外科専門誌の最小侵襲脊椎手術の特集号です。個々の手術に関してのエキスパートが執筆しています。
| Monthly Book Orthopaedics. Vol.19 No.12 低侵襲脊椎手術のコツとpitfall 目次 |
| 頚椎後方手術における筋肉温存手術の考え方と成績 | 谷戸 祥之ほか |
| 頚椎後縦靱帯骨化症患者に対して深層伸筋を温存した術式(TEMPLA)を行った症例について術前後の頚椎形態変化と深層伸筋の萎縮,手術成績を検討した | |
| MED法による頚椎手術の可能性とリスク | 吉田 宗人ほか |
| 頚椎症性脊髄症・神経根症への脊椎内視鏡手術は,頚部後方軟部組織への低侵襲から術後頚部痛などがほとんどなく,早期社会復帰を可能にする手術方法である | |
| Skip laminoplastyにおける手術のコツとpitfall | 谷戸 祥之ほか |
| 頚椎症性脊髄症に対して非責任椎間に侵襲を加えない選択的椎弓形成術により良好な臨床成績が得られたので紹介し,そのpitfallについて考察した | |
| 腰椎手術におけるクリティカルパス作成・運用・分析のポイント | 青木 雅人ほか |
| 整形外科パスの考え方,作成,運用について述べる.当院の腰椎パスの分析から,鏡視下手術がオープンの後方手術に比べ,術後疼痛,合併症の発生に関しても有効であることが示唆された | |
| 脊椎低侵襲手術を支える麻酔の知識 | 河西 稔 |
| 低侵襲手術麻酔は,決して安全なものではない.術前評価は,早期離床,早期退院を考える場合,さらに詳細に検討し対応する必要がある.『手術には,大手術と小手術があるが,麻酔にはそうした差は無い』 | |
| 腰椎椎間板ヘルニアに対する顕微鏡下手術 | 藤本 吉範ほか |
| 本稿ではもっとも標準的な顕微鏡下手術のコツとpitfallについて記載した.腰椎椎間板ヘルニアに対する顕微鏡下手術は時の試練を経た有効な手術法である. | |
| 内視鏡椎間板ヘルニア摘出術のpitfall―日帰り手術に向けて― | 出沢 明ほか |
| 経皮的内視鏡椎間板ヘルニア摘出術(PELD;percutaneous endoscopic lumbar discectomy)による日帰り手術の問題点とコツについて解説した | |
| 腰椎椎間板ヘルニアに対するPLDDの適応と成績 | 西島雄一郎 |
| レーザー椎間板除圧術の適応はcontained typeヘルニアのみである.成績は顕微鏡ヘルニア摘出術との比較で予後成績は劣り,再発率も高かった.神経損傷合併率,入院期間,原職への復帰期間で勝っていた. | |
| CTガイド下鏡視下経皮的レーザー椎間板除圧術 | 百町 貴彦ほか |
| 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的レーザー椎間板除圧術は,治療成績には一定の限度があるものの,CTをガイドとして用いることにより,正確な穿刺部位の把握ができ,安全なレーザー照射が可能である. | |
| 腰部脊柱管狭窄症に対する筋肉温存型椎弓間除圧術(MILD法) | 八田陽一郎ほか |
| 腰部脊柱管狭窄症に対し,顕微鏡下に棘突起間から進入することで,椎間関節・傍脊柱筋・棘突起のレバーアーム機能を温存して除圧ができるMILD法の詳細な手技と成績について述べた. | |
| MED法を用いた腰椎手術―椎間板ヘルニア摘出(再手術も含めて) および腰部脊柱管狭窄症の除圧手術 | 夏山 元伸 |
| MEDを始めるにあたっては,椎弓間の広いL5/Sヘルニアから始め,L4/5,migratedヘルニア,再発ヘルニア,脊柱管狭窄症という具合に徐々に難易度の高い症例に適応を拡大していくことが重要である | |
| 腰部脊柱管狭窄症に対する顕微鏡下片側進入両側除圧術 ―METRxTM micro discectomy systemを用いて― | 志津 直行ほか |
| 腰部脊柱管狭窄症に対する低侵襲手術としてMETRxTM micro discectomy systemを用いた片側進入両側除圧手術を紹介する.チュブラーレトラクターの先端をwandingすることにより直視下に進入側と反対側の骨切除 および神経根除圧が可能である | |
③頸椎・頚髄のガイドブック 初診から顕微鏡手術まで, 金 彪 著, メジカルビュー社, 2007
頸椎疾患の診断法、手術法を理解するのに非常に良い本です。医師向けの本で内容的にも難しく値段も9500円と高いのですが、手術を考えている頸椎疾患患者にとっては、勉強になることが多いと思います。
(5)日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
http://www.joa.or.jp/jp/frame.asp?id1=48
日本整形外科学会の認定資格です。認定医の中には最小侵襲手術を行っていない医師も数多く含まれていますが、最小侵襲手術の対象にならない患者にとっては、有力な候補となります。また診断技術においては非常に高いと考えられるため、最初に訪問する病院として選択するのも良いと思います。
こうした候補の中から地域性などを考慮し、病院、医師をリストアップしていけば、一定水準以上の技術をもった医師に手術してもらえる可能性が高くなり、技術的に未熟な医師に当たる危険性はほとんどなくなります。
なお日本に限定せず、技術さえ高ければ海外でも構わないとういうのであれば、韓国のウリドゥル病院を選択肢の中に入れるのが良いと思います。海外からの患者に対しては特診ドクターと呼ばれる技術的に最高ランクの医師が手術をしてくれますから、誰が手術を行ったとしても、日本のトップクラスの医師と遜色ないレベルの手術が受けられるはずです。