退院後
退院の日は、入院費用の清算を済ませた後、キムさんに空港まで車で送ってもらい、搭乗手続きまで済ませていただきました。飛行機に乗ってからは、若干揺れが気になったものの、頸を手で押さえていたため、痛みがでることはありませんでした。苦労したのは羽田空港に着き、荷物を受け取ってからでした。台車はついていたものの、引っ張ったり押したりする動作は頸に負担がかかり、頸から背中にかけての灼熱感が強くなったため、10mくらいずつ休みをとりながら歩きました。空港からはバスで自宅近くの駅まで行き、家族に車で駅まで迎えにきてもらい、家に帰りました。
切開部位は、体に吸収される糸で縫合したため、病院に行って抜糸する必要はなく、帰国後は1日置きに2回テープの上から術創を消毒するだけでした。病院へ行くことも考えましたが、痛みや腫れがほとんどなかったため、自分で市販の消毒薬を使い消毒を行いました。術後10日後にはテープを剥がしましたが、傷口はふさがっており、触ったときの痛みもありませんでした。
頸の痛みは、普通の状態ではほとんど認められず、頸に何かぶつかったときや、寝るとき、起きるときに痛みがあるくらいでした。元々の椎間板ヘルニアの症状は、ほとんど気にならなくなっており、頭痛も手術後は全くなくなりました。特に足の調子が良く、1時間以上平気で歩けるようになったのは非常に有難いことでした。 大変だったのは、挿入した人工骨が癒合するまでの約3ヵ月間、頸椎カラーを着用する生活でした。風呂に入るときだけはカラーを外しましたが、それ以外は寝る時も着用しており、日常生活においてはかなり不便を感じていました。
仕事は帰国した翌日だけ休み、翌々日から開始しました。最初は少しキーボードを打つだけでも、頸から背中にかけて灼熱感があり、休みながらの作業となりましたが、頭の方はスッキリしていたため、仕事の能率はかなり良くなりました。帰国後1週間目くらいからは、普通に仕事ができるようになりました。
術後の診断は、6週間後と3ヵ月後の2回、日本で撮影したX線写真をウリドゥル病院に郵送し、診断結果を連絡してもらいました。頸椎カラーは2ヵ月後頃より家にいるときには外していましたが、完全に外れたのは3ヵ月後でした。最初は様子をみながらの状態でしたが、痛みが全くなかったため、2〜3日後からはほとんど頸のことを意識せずに動けるようになり、ようやく普通の生活に戻ることができました。
現在手術から約1年が経過しましたが、ほとんど症状はなく、頸も普通に動かせるようになり、完治といえる状態にまで回復しています。ずっと悩まされていた頭痛も、仕事でパソコンを長時間使用したときに月1〜2回出る位で、ヘルニアが原因と思われる頭痛は全くなくなりました。体調も良くなったため無理が利くようになり、今では夜中の1時、2時頃まで仕事をしても、翌日に影響が出ることもありません。ただ3箇所を固定しているため、頸を大きく動かすことには不安があり、特に車でバックするときに注意が必要となりますが、体全体をひねって頸の動きを少なくすることで問題なく対処できています。手術の跡も時間とともに目立たなくなり、今では注意してみなければ、ほとんど気がつかないほどです。実際、ここまで回復するというのは、手術前には想像できなかったことでした。
| 【手術部位】 | ||
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| 手術10日後 | 手術1年後 | |
ただ固定術の場合に注意しなければいけないのは、これから先だと思います。固定術では固定した部分の上下の椎間板に負担がかかるため、新たなヘルニアの出現や、椎間板変性など起こりやすくなる危険性があります。ただこれは手術を受ける前から分かっていたことであり、頸にできるだけ負担がかからないよう注意するしか方法はないと考えています。それでもヘルニアを抱えて苦しんでいた頃の状況を考えれば、普通に生活できるだけでも有難いことであり、日常生活での注意など大した負担にはならないと思います。将来、再手術が必要になる可能性もありますが、そのときにはまたウリドゥル病院で手術してもらうつもりですし、それは手術が必要となったときに改めて考えればよいことかもしれません。
実際に自分自身で椎間板ヘルニアの手術を経験してみて、病院選びがいかに重要であるかを再認識させられました。技術的に最高レベルとされるウリドゥル病院で8時間かかる難手術であったわけですから、もし日本で手術を受けていたとしたら、おそらく今の自分はなかったかもしれないと思います。
椎間板ヘルニアの手術は、日本の医療レベルでも対応できるケースは多いと思いますが、患者によっては海外の技術の高い病院で手術を受けた方がメリットが大きい場合もあります。日本では全身麻酔による切開手術が必要なケースでも、ウリドゥル病院では局所麻酔による1泊入院の施術で対応できる可能性がありますし、日本では手術ができないと言われた患者が、どうしようもなくなってウリドゥル病院で手術を受け、治ったケースも少なくありません。技術的に優れていることは明らかですし、問題になるのは費用面だけですから、コスト・ベネフィットから判断して、自費診療に見合うだけの肉体的利益が期待できる場合には海外での手術は十分選択肢になり得ると思います。
今の時代はインターネットで世界中の情報を得ることができますし、国内だけで手術を考える時代ではないと思います。最近は外国人患者を招致するメディカルツーリズム(医療観光)が東南アジアを中心に盛んになっており、主な国ではタイが約140万人、シンガポールが約40万人の外国人患者の治療を行っています。また韓国でも2007年から本格的に外国人患者の受け入れ政策を進めています。今や海外の手術は特別なものではなくなっており、最先端医療を希望する患者が、世界を視野に入れて病院を探すという方法が、これからは一般的になってくるのではないかと思います。

